top of page
検索


ひきたてなだの大捕物 第六幕(完)
◇引立那駄の大捕物 パキン、と額で何かが割れる音がした。 手で触ると、ぬめった感触の中に固い小さなものが一つ。 角だ。 角が生えている。 神仏の世の住人に。 口元まで流れたなまぬるい雫を、舌先で舐めた。 『僕もついにあやかしかぁ。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 4分


ひきたてなだの大捕物 第五幕
◇偽り そして今、ひたすら公道を歩いている。 この黒いもや、小さいけれど人にあまり良い影響がないものだろうから、 誰かと長時間会う訳にはいかない。 「どうしよ…」 喉渇いた。お腹減った。 ばっちゃんの家に帰らなきゃ…でも、このままの状態で会うわけにはいかない。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 3分


ひきたてなだの大捕物 第四幕
◇染み移し 私が用意したものは3つ。 ばっちゃんの知り合いからもらったお札2枚。 一枚は厄除けのお札。 一枚は破魔のお札。 あとは、ポテチを少し。 「では!始めます」 「待った待った、少しぐらい流れを説明してくれ」 『そ、そうよ!これで何かあったら困るじゃない』 『…困る』...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 2分


ひきたてなだの大捕物 第三幕
◇汚れの取り方 最近道を歩いてるとちっちゃいもやが見えるし、 人についてる小さいもやも見えるし、 なんなら家の中でももやが見えるし、 なんか動いてるし… 「どうしよう…」 「あらあら、大変ねぇ」 ばっちゃんは何も聞かずにお菓子と、熱いお茶をかこん、と私の前に置いた。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 3分


ひきたてなだの大捕物 第二幕
◇引立さんちの那駄くん 「お前、ここまで歩いてきたのか」 青年は驚いたように目を見開いた。 はぁ、はぁ、はぁ… 私は額の汗を拭いながら、来た道を振り返った。 山道。 獣道。 ところどころ壊れてる階段。 「何この道…」 「水とポテチでも出すから中入れ」...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 4分


ひきたてなだの大捕物 第一幕
◇もや 「え…?え…何…」 月明かりが照らすのは、灰色のもや。 『お、おお、お、お前、美味しそ、なもの、持ってるなぁ』 「…これ?」 私は、手に持っていたフライドチキンを指さした。 こんな時間に小腹が空いて、 月でも見ながら公園で食べようと、先程コンビニで買った物だ。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 3分


赤い耳 7章 GUILD(完)
1.Lon 「おかえりなさい、フリーさん」 扉を開けた手が、少しだけ強張った。 「いつもありがとう、ロン。変わりなかったかな」 「はい。静かに眠り続けています。 健康面はシャーロットさんが把握してくれていますし、あまり問題はないかと」 テーブルに、煙草が数種類並んでいる。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 3分


赤い耳 6章 SERGA
「仕立ててやったんだから、普段から着ろよ!」 「だってあんな明るい色の服、落ち着かない…ジゼル…助けて」 2人はジゼルの周りをくるくると回りながら会話している。 ジゼルは苦笑い。 「2人とも、いったん落ち着けって」 「あら、そこは『俺の服も作ってくれ』じゃないの?」...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 7分


赤い耳 5章 CHARLOTTE
1.知恵の実の使い方 「シャーロットくん、一体いつになったらできるんだね」 コツコツとつま先を床に打ち付けながら、男は言う。 襟に止められたピンバッジの数が、その男のこの国での立場を表しているようだった。 「わかりません。私自身新しい試みですので」...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 3分


赤い耳 4章 GIZELLE
1.修理屋の息子 俺は、この街の修理屋の息子だった。 フリーさんに雇われ、気づけばここで、いろんなものを直していた。 契約の注意書きはひとつ。 ここで見聞きしたことは決して外に漏らさないこと。 毎日顔を合わせ、なんでもない話をする。 踏み込みすぎない。 深入りはしない。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 7分


赤い耳 3章 FREE
1.家族のもとへ 靴音を響かせながらいくつかの扉の前を通り過ぎ、 少しだけ開かれている木製のドアを目指す。 手をかけて中を覗くと、ランプの灯が静かに揺らめいていた。 ぺら、と紙をめくる音がする。 机の上には、淹れられたお茶が冷めないようかけられたポットカバー。...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 11分


赤い耳 2章 JANNET
1.絡まる糸 「あの新人が、セルガの世話役になったぁ!?」 こいつは、ボサボサの青い髪で目を隠す、いつもツナギ姿のジゼル。 そいつの口から、信じられない言葉が飛び出した。 「自分の目で確かめてこいよ」 走ってセルガの部屋の前に向かうと、ちょうどセルガの部屋から2人揃って出て...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 12分


赤い耳 1章 LON
あの人に復讐をするつもりでこの土地に来た。 それなのに、僕は結局、本当に伝えたかったことは何一つ言葉にできないまま。 あの人に見事に殺されてしまった。 これは、そんな僕の、白と黒の世界の話。 1.白と黒の世界で 「お兄さん!この店寄ってかない?」...

みうらさここ
2022年4月30日読了時間: 9分
小説: Blog2
bottom of page

