彼方に行った君へ
- みうらさここ

- 2022年5月1日
- 読了時間: 1分
更新日:2023年9月11日
桜の盛りを過ぎたころだった。
「僕は行くよ」
君は僕だけにそう告げて、いなくなった。
学校では生徒会長という立場だった君がいなくなって、しばらくは生徒会のメンバーが忙しそうにミーティングを重ねていた。
家族が教師と話しているのを見たが、現実を受けとめられず戸惑っているように見えた。
教師や先輩からは可愛がられ、後輩からは慕われていた君について、いろんな憶測が飛び交った。
だがそれも、一か月もすれば次の生徒会長の話題に移っていった。
君がなぜ僕にだけそれを告げたのか。
僕にはそれだけがわからなかった。
君と僕は、特別仲が良かったわけではない。
ただごくたまに、人には見せないやわらかい何かを感じることはあった。
そういう時、僕は黙って君を見ていた。
未だ、足取りはつかめない。
すぐそばで静かに暮らしているのかもしれないし、
どこか遠くへ行ってしまったのかもしれない。
あの時の君はどこへ行きたかったのか。
心のどこかに焼き付いたその横顔が蘇り、
僕は考えることがある。






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